先日、小学校2年生の娘の運動会がありました。
娘は場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)&HSC※で緘動(かんどう)※もあり、みんなの中で立ったり座ったりはできるけど、ダンスや体操は一切できません。手をひいてもらったりすれば走ることもできるかな?という感じです。
娘は1年生の頃は普通学級のみで過ごしていましたが、2年生になってからは特別支援学級にも在籍しています。入学して2回目の運動会ですが、去年より今年の方がいろいろ対応してもらえて良かったです。
そもそも、運動会にみんな必ず出なきゃいけないなんておかしい、かけっこの順位付けとか何の目的があってやってるの?という考えの私ですが、日本で普通の学校に通っていたら出ないという選択はなかなか難しいです。
内心憂鬱に思いながらも、出る方向で先生と相談しながら運動会の参加の仕方を決めていきました。
去年は運動会当日の朝、不安で泣いてしまった娘でしたが、今年はそのような不安もなく、当日も楽しく過ごせたようなので良かったかな、と思っています。
今回は、運動会で学校にどんな対応をお願いすれば良いか、去年と今年の対応を比較しながらまとめてみたいと思います。
私の娘と同じくらいの症状の方は、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
※HSC(Highly Sensitive Child)・・・ハイリーセンシティブチャイルド・・・人一倍敏感で、繊細。感受性豊かで傷付きやすい性質を持つ子。5人に1人の割合で存在すると言われている。
※緘動(かんどう)・・・話せないだけでなく、集団の場で不安や緊張のため身体が動かなくなる症状。体の動き全体がぎこちなく動きが固まってしまうタイプと、逆に身体全体の力が抜けたような状態になる2タイプがある。
去年の運動会での対応(普通学級のみ在籍)
コロナの影響で通常の6月ではなく、秋に運動会が開催されました。また、保護者の人数もかなり制限されていたので観客が今年の半分くらいだったと思います。
運動会の種目は、
- かけっこ
- ダンス
- 障害物リレー
でした。
去年のかけっこ
とても緊張して普段よりだいぶぎこちなかったですが、一人で走り切ることができました。
しかし、かけっこで順位を付けられるという経験を初めてして、最下位だったことがショックなようでした。それまで純粋に走ることが大好きだったのですが、これをきっかけに「私は走るのが遅い」と苦手意識を持つようになり、これを最後に学校でかけっこを一人で走れなくなりました。
体が固まった状態で走り、しかも娘は早生まれのため1歳近く差がある子たちと競争するような状況。
だから最下位なのは目に見えていたし、順位なんてどうでも良いという事を何度も話しましたが、やはりこうやって順位をつけられることは子どもの心に大きく残ってしまうので、フォローしても難しいです。
また、当日に初めて、ピストルの「バーン!」という大きな音でスタートし、順位を付けるということを知ったのですが、こういうことも事前に教えておいてほしかったですね。今の時代こういうことはしないだろうと勝手に思っていたので驚きました。
去年のダンス
踊れないので参加することは難しく、私は見学でも良いと思っていることを伝えましたが、学校としてはみんな一緒に出ることにこだわっていたので、何か良い方法があれば教えてくださいと担任に話していました。
家ではしっかり踊れるので家で練習したり、それを動画に撮って学校で先生に見せてみたり、放課後に誰もいない教室でダンスの練習をしてみたりしましたが、やはりみんなの中でダンスを踊るという事はできませんでした。
そして、担任も色々考えてくれて、移動は友達二人に手を引っ張ってもらい、他の所は担任が後ろから娘の手を持って動かす、ということになりました。
いろいろ考えていただきありがたいと思っていますが、正直なところ、操り人形のように動かされている娘を見るのはつらかったし、娘自身もいい思いはしていなかっただろうなと思います。
当然それによって本人の達成感や自信には全くつながらなかったし、それを見て何か言ってくる子もいたので、どちらかというとみんなが当たり前のようにできることが自分にはできないと自信をなくすことになったと思います。
この方法だと、残念ながら、「みんなで参加する」という学校側の目的を達成しただけのように感じます。
去年の障害物リレー
くじをひいてそこに書いてある競技をマイクで読み、その競技を行う、というものでしたが、娘が学校でできないこと(口頭でマイクで話す、なわとびなどの競技)や苦手なこと(先の見通しが立たないこと)が含まれており、心配しました。
娘の時は、担任が代わりにマイクで読んでくれ、競技もあらかじめ決めておいてくれたのか、担任と手をつないで平均台などの競技をして、無事に終えることができました。
どんなふうに行うのか知らされていなかったので、当日はかなりひやひやしました。
ひやひやしないように、一つ一つどうやって参加するのか詳しく聞いておいても良かったかなと思います。
ただ、運動会前にいろいろ支援をお願いしていたことをちゃんと理解してやってくださっていたので、当日に本人が困ってしまうようなことはなく良かったです。
今年の運動会での対応(支援学級にも在籍)
今年は予定通り6月に行われ、人数制限も緩和されて去年の約2倍くらいは保護者が見に来ていたんじゃないかと思います。場面緘黙の子としては、見物客が少ない方が良かったと思います。
運動会の種目は、
- かけっこ
- ダンス
- 障害物リレー
- 全校ダンス
で去年とほとんど同じですが、全校ダンスが加わりました。
今年のかけっこ
去年は一人でなんとか走れたのですが、今年は練習の時から一人では走ることができず、支援級の先生が練習の時一緒に走ってくれていました。
支援級の先生とは、本番は見学する方向で進めていたのですが、本人に聞いたら「運動会のめあての紙に“かけっこをがんばる”と書いてしまったから出なきゃいけないんだよ」とのことでした(こんなふうに、自分で決めたわけでもない行事の際にいつもめあてを書かせるのもやめてほしいと内心思ってます)。
難しければ出なくても大丈夫なんだよと言ったのですが、それでも出るとのことで、本番も出ることにしました。
支援級の先生が、一緒に走れるようにと娘を端っこのコースにしてくれるよう頼んでくれ、本番も走りました。先生と手をつなぎながら走り、ゴール直前からは一人で走り切ることができました。
今年のダンス
今年も家ではよく踊れるのですが、学校のみんなの中で踊ることはできず、練習の時はいつも支援級の先生と一緒に端っこで見学していました。
当然本番も踊れないので見学の予定だったのですが、隣のクラスの担任の先生がダンスの音楽をかける係を娘にお願いしてくれました。
合図に合わせてスイッチを押すというもので、練習でやってみたら一人でもできたようで、本番もみんなと同じ衣装を着て、音楽をかける係として参加させてもらうことになりました。
娘も自分だけ見学していることをやっぱり気にしていたので、自分の役割をちゃんと果たせることが嬉しかったようでした。
どうしたってできないことを無理してみんなと同じにやらせるよりも、こうやってちゃんとできる役割を与えてがんばれる環境をつくってくれたことは、本当にありがたかったです。
今年の障害物リレー
去年とはだいぶ内容が違っていて、二人一組でペアになって、平均台→わっかの上をジャンプ→走る、というもので、娘にとって先生の補助がなくてもできる内容でした。
娘も、これは練習の時からペアの子と張り切ってやっていたようでした。本番でもしっかりやっていました。
もしかしたら、みんなができるような内容にしてくれたのかな?わかりませんが、そうだったらありがたいです。
全校ダンス
これも練習のときから全く踊ることはできず、でも立ったり座ったりのところはできるのでどうしますか?と支援級の先生が聞いてくれ、娘に聞くと、最終的に「出る」ということだったので出ました。
本番は人が多すぎて全く見えませんでしたが、支援級の先生も隣についてくれていて、ダンスに合わせて立ったり座ったりはできていたようです。
結局、支援級の先生にサポートしてもらったり、できる役割を与えていただいて全部参加することができました。
そして今年は、本番まで不安な日々を送るということもそれほどなく、みんなのようにできなくて娘が自信を失ったりすることもなく、ホッとしています。
去年とくらべてよかったこと
去年と今年の運動会をくらべて、特によかったことは次の3つです。
①担任以外の先生にも協力してもらえたこと
今年は支援級に入ったので、支援級の先生に日々様子をくわしく教えてもらい、ちゃんと相談できたことが良かったです。
担任の先生がしっかり対応してくれるならそれで良いと思いますが、やはり担任の先生だけだと、行事前や本番はかなりバタバタしているので対応をそこまでお願いしづらかったり、十分でなかったりするかもしれません。
支援級に入っていたら支援級の先生に相談できますが、そうでない場合は、教頭先生など他の先生にも「運動会が心配」ということを伝えておいて、しっかり配慮してもらえるようにするのが良いかと思います。
私は、去年の音楽会では娘の支援を十分にお願いすることができておらず、娘につらい思いをさせてしまいました。
行事のたびに毎回大変ではありますが、担任まかせにせず、うまく他の先生も巻き込んで子どもに合ったサポートをしてもらえるようにするのが良いと思います。
②できる役割を与えてもらえたこと
今年の運動会で良かったのは、できないことを無理にみんなと同じようにやらせるのではなく、ダンスの音楽をかけるというできる役割を与えてもらえたことでした。
去年はこういう対応はなかったので、こういうことを提案してくれる先生としてくれない先生がいると思います。
なので、もし提案してくれなければ自分から、「体は動かせないのですが、例えばダンスの音楽をかけることならできるかもしれません。そのような形で参加することなどはできますでしょうか?」と聞いてみても良いと思います。
③子どもの意向を優先できたこと
去年は、見学やお休みも考えていると事前に伝えてはいたのですが、出る前提で進んでおり、最終的に出るしかないのだろうなという感じで私も娘も運動会まで過ごしていました。
一応娘の気持ちを聞いてみても「いや、出ないなんて無理でしょ」という感じで、結局本人の意向と関係なく出ました。いろいろと配慮はしていただいたので無事に終えられたし、楽しめた部分もあったのでそれはそれで結果的には良かったのかなとも思います。
ただ今年は、運動会に半強制的に参加という感じでなく、出る出ないの選択肢を与えてもらえたという事が一番良かったなと思います。
支援級に入り、担任の先生とはなかなか話せなかった細かいことも支援級の先生とは日頃から共有できていたため、私や娘の意向をとても大事にしてくれました。だから出ないことも選べるというのは、私にも娘にとっても安心でした。
去年のように「出たくないけど出なきゃ」ではなく、今年は最終的に娘が自分で「出る」と決めて出たことがとても良かったです(出なきゃいけない雰囲気だったからだとは思いますが、それでも…)。
出たくもなく、適切な配慮もないのにできないものに無理して出ても本人の成長につながるわけはなく、トラウマが残るだけです。
いろいろなタイプの先生がいて、「運動会に出ないなんてダメだ!」なんて頭ごなしに言うような先生もいるかもしれませんが、目的は何なのかちゃんと考えてほしいと思います。
無理やりやらされたものには大して意味はなく、本人が自分で決めてやるからこそ成長があるのです。
運動会についてはほぼ強制的にやらされるものではありますが、親である私たちだけでも、ちゃんと子どもの思いを尊重してあげなければと思います。
運動会もそうですが、目的がよくわからないもの、聞いても納得いかないようなものが日本の学校にはとても多く存在すると思います。そのような、大人もうまく説明できないものに子どもが無理やり参加させられても納得できないはずです(そこまで考えずに単純に楽しめる子はそれで全然良いと思うのですが)。
そして、ちゃんと自分の気持ちを優先してくれるんだということが伝われば、子どもも安心して苦手なことにも挑戦ができるんじゃないかと感じています。
「出ない」という選択もアリ
うちの場合は、適切な支援をしてもらうことができたのと、本人が最終的に「出る」といったので運動会に出ましたが、子どもにとってマイナスだと思えば、自信を持って「出ない」という選択をしても良いと思います。
とは言え、「運動会の目的があやふやだし、無理してまで出る必要ない」とか「子どもにとってマイナスなので順位付けするかけっこは出ない方がいいと思ってる」などと本心を言ってしまうと、「みんな我慢してがんばってるのに!」という謎の反論ですごい悪い親みたいに言ってくるような昔ながらの先生もまだいると思うので、注意が必要です。
そういう先生には、場面緘黙症という病気の症状で、やらないのではなくできないのだということだけを丁寧に教えてあげるのが良いと思います。また、理解を示してくれる先生もいると思うので、特別支援の知識を持つ先生や教頭先生など、他の先生に相談してみるのが良いかもしれません。
こんなこと、と言ってしまってはあれですが、でもこんなことのために毎年暗く不安な日々を送らなければいけない子も実際たくさんいるのです。
そこまでして出る必要など全くなくて、それよりもその子のためになることに時間を使った方が、長い人生のことを考えたら絶対に良いというのが本心です。
まとめ
運動会についてここまで書いてきましたが、個人的に運動会はなくて良いと思っています。
去年も今年も、運動会前は正直とても憂鬱でした。
娘が自分で出たいと言ったわけでもなく、出てほしいわけでもなく、強制的に参加させられるのに、毎回こちらから対応をお願いして、「すみません」「ありがとうございます」を連発しなければいけないのですから…。
支援級の他のお母さんと話していても、大体皆さんそのように言っています。
よく学校だよりに書いてあるような、「みんなが楽しみに待ちわびている運動会」なんてことはないです。
だから、運動会などの行事も子ども自身が出るか出ないか、そして何をやるかちゃんと決められるような学校が本当は一番良いと思っています。
でも、終わってみたら娘はまあまあ楽しかったりもしたようなので、こういうのも日本にはまだあるんだいう経験としては良かったのかな?ということにします。
同じように、運動会前で憂鬱な思いをしている子やその親御さんもたくさんいらっしゃると思います。
学校のためでなく、自分と子どもの思いを優先して選んでいってくださいね。
一緒に乗り切っていきましょう!
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